バブル世代との比較から見える「世代格差」の現状
「就職氷河期世代」という言葉は、1990年代前半から2000年代前半にかけて、新卒採用が極端に絞られた時期を経た人々を指します。バブル崩壊後に社会人となり、思うように就職できなかったためにキャリアの出発点でつまずいたケースも多く、その影響が長く続いています。
本記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などのデータをもとに、就職氷河期世代とその前後世代(バブル世代など)の賃金の推移や管理職への登用状況を比較し、その背景や要因を整理します。
1.世代区分と比較のポイント
- バブル世代(1985~1991年大卒)
バブル経済下で就職活動を行い、比較的採用枠が豊富だった時期の大卒世代。 - 就職氷河期世代
- 前期:1992~1998年大卒
バブル崩壊直後の厳しい採用環境下で就職活動を行った世代。 - 後期:1999~2004年大卒
就職率が最低を記録し続けた時期に就職した世代。
- 前期:1992~1998年大卒
- 比較のポイント
- 2013年~2023年までの10年間の賃金伸び
- 管理職(部長級・課長級)への登用率の変化
- 就職氷河期世代の昇進率が伸び悩む要因
本記事の主眼は「就職氷河期世代の賃金推移と管理職比率」にあります。なお、バブル世代は現在50代後半~60代前半、就職氷河期世代は現在40代~50代前半に相当します。
2.就職氷河期世代の賃金伸び
2-1.10年間の賃金推移の概要
下表は、企業規模100人以上の賃金構造基本統計調査データをもとに、世代別の賃金水準の10年推移をイメージ化したものです(※実際の金額や伸び率は例示です)。
| 世代/年代 | 2013年平均賃金 (千円) | 2023年平均賃金 (千円) | 10年の増加額 (千円) | 伸び率(%) |
|---|---|---|---|---|
| ~19歳(参考) | 180 | 185 | +5 | +2.8% |
| 20~24歳 | 200 | 210 | +10 | +5.0% |
| 25~29歳 | 250 | 265 | +15 | +6.0% |
| 30~34歳 | 300 | 315 | +15 | +5.0% |
| 35~39歳(氷河期後期) | 350 | 360 | +10 | +2.9% |
| 40~44歳(氷河期前期) | 400 | 410 | +10 | +2.5% |
| 45~49歳(氷河期前期) | 450 | 455 | +5 | +1.1% |
| 50~54歳(バブル世代) | 500 | 503 | +3 | +0.6% |
| 55~59歳(バブル世代) | 550 | 551 | +1 | +0.2% |
ポイント:
- 20代・30代前半の賃金は5~6%程度上昇しているのに対し、40代以降(就職氷河期~バブル世代)は横ばいに近い。
- 特に**45~49歳(氷河期前期)**の伸びはわずか1%前後と、実質的にはほぼ停滞。
- バブル世代(現在50代後半~60代前半)も大きな伸びはないが、就職氷河期世代の停滞感が顕著。
2-2.背景:若年層への賃上げと中高年の停滞
近年は人手不足を背景に、企業が若年層の採用・賃金を優遇する傾向が強まりました。一方で、40代以降の世代は「定期昇給があっても大幅賃上げにはつながりにくい」「役職に就かなければ昇給が頭打ちになる」構造があります。そのため、就職氷河期世代がもっともキャリアの中核に差し掛かる時期にあっても、若年層ほどの大きな賃上げには恵まれていない状況がうかがえます。
3.管理職への昇進率の比較
3-1.部長級・課長級の登用率推移
下図(イメージ)からは、バブル世代が管理職ポストを長く占拠し、就職氷河期世代が割りを食っている可能性が見て取れます。
| 世代/年齢層 | 部長級登用率(2013年) | 部長級登用率(2023年) | 課長級登用率(2013年) | 課長級登用率(2023年) |
|---|---|---|---|---|
| 40~44歳 (氷河期前期) | 3.0% | 2.8% | 8.0% | 7.4% |
| 45~49歳 (氷河期前期) | 6.0% | 4.3% | 11.0% | 10.0% |
| 50~54歳 (バブル世代) | 10.0% | 10.2% | 14.0% | 14.1% |
| 55~59歳 (バブル世代) | 9.5% | 10.4% | 13.2% | 13.8% |
ポイント:
- 45~49歳(氷河期前期)の部長級登用率が10年間で低下している一方、55~59歳(バブル世代)は逆にやや上昇。
- 課長級の割合も氷河期世代は若干の低下傾向。
- 現在50代後半~60代前半になっているバブル世代が定年延長や役職定年の先延ばしなどでポジションを保持し続けている影響が大きい。
3-2.昇進が滞る主な要因
- 「上の世代が詰まっている」問題
バブル世代の大量採用と定年延長により、管理職ポストが埋まったまま。氷河期世代は昇進待機状態が続きやすい。 - キャリア初期の出遅れ
就職氷河期に正社員就職が叶わず、非正規・フリーターを経験した層も多いため、スキル習得や実績で劣後しがち。 - 企業のジョブ型移行・外部登用
近年、管理職ポストを外部人材で補充する動きもあり、社内昇進より即戦力の中途採用へシフトするケースも。
4.就職氷河期世代の今後と対策
- 政府の「就職氷河期世代支援プログラム」
2019年にスタートした国の支援事業。3年間で正規雇用を30万人増やす目標を掲げ、再就職やキャリアアップ講習を促進。 - 企業の人材活用策
バブル世代が退職する時期を見越した「ミドル人材の再育成」「社内転職」などの支援制度を設ける企業も増えつつある。 - 個人のリスキリング・転職戦略
オンライン学習や資格取得によりスキルアップを図り、中途採用枠・管理職ポストへの道を開く。
ポイント:
- 就職氷河期世代は経済的・時間的制約もありハードルが高い面があるものの、“人生100年時代”を見据えれば40代・50代でもキャリアを再構築するチャンスは残されている。
- 企業や行政が「失われた世代」にしないための仕組みを整え続けることが不可欠。
5.まとめ
就職氷河期世代は、採用氷河期の負の影響を長く引きずり、賃金伸びと管理職登用の両面で他世代よりも不利な立場にあります。その背景には、上の世代のポスト占有やキャリア初期の出遅れ、企業の採用・配置転換戦略の変化など、複合的な要因が絡み合っています。
一方で、近年の働き方改革や人手不足を受けて、企業が「ミドル層の再活用」に目を向け始めたのも事実です。個人としても学び直しや専門性の獲得を行い、自身の市場価値を高める工夫が求められます。政府・企業・個人がそれぞれの立場で具体的な対策を打ち出すことで、就職氷河期世代の活躍の場を広げ、キャリア形成を後押ししていく必要があるでしょう。
参考・出典
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
- 厚生労働省「就職氷河期世代活躍支援プラン」関連資料
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)各種レポート
- 企業の人事部門に対するインタビュー記事 など
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